夏の句 2016 立葵どこか母似の佇まい 富士からの水青々と代田掻く 葱坊主頷き合いて居る如し タンポポの絮ふくらんで風を待つ なんとまあ大きな口や燕の子 川沿いを海まで歩き風薫る 川沿いを海まで歩き春惜しむ 蟻の列時にはみだす二三匹 笑顔居て泣き面も居て桜桃忌 人の名をまた忘れたる蛍の夜 囀りと瀬音の遠く近くかな 夏座敷はなし途切れて風動く 老鶯や文字の掠れし道しるべ 梅雨晴れの海に海色戻りけり 犬が舌だらりと垂らす暑さかな 老鶯の一丁ほどを鳴き止まず 弧を描く鳶の番や梅雨明ける 大盛りの白いご飯や雲の峰 公園に子と犬走る梅雨晴間 鎌倉や紫陽花映るにはたずみ 土用入ともかく旨い米を買う ハマナスの花言葉や一期一会 弧を描く鳶の番や梅雨明ける 公園に子と犬走る今日の秋 大盛りの白いご飯や敗戦忌 2015 大の字で二度寝むさぼる晩夏かな 山の匂い川の匂いや夏料理 よく動く女医先生の素足かな 何時迄も無芸大食トコロテン 土壁の高さを超えて百日紅 浅草の梅雨を駈け抜く人力車 梅雨寒や釦の一つ取れしまま 水打って路地に街騒戻りけり 半夏生朝一番の風入れる 紫陽花の奥よりショパン流れ来し 俎板に鱗張り付く立夏かな 畳屋は街に一軒明け易し 落日を海に収めて梅雨に入る すっと出ぬ挨拶言葉木下闇 雲縫いて光の束や梅雨晴間 逝く春や誰も彼もにある故郷 今着きし封書を開く薄暑かな 残りたる時間に限り日脚のぶ 昼間から開く居酒屋街薄暑 アルバムに故人の多し春惜しむ 2014 猫が鳥くわえて来たり桜桃忌 向日葵のカサカサ空を焦がしけり 向日葵や萎れて人の方を向く 向日葵や益々つのる神頼み 外人に道問われたる薄暑かな 薄情と妻に言われて桜桃忌 のめり込むことも無くなり桜桃忌 妻語り夫頷く桜桃忌 短夜や天気予報のあと時報 葉桜や強羅一番坂二番坂 空梅雨やピカソの青の時が好き 十薬や不器用なれど恙無し 十薬や生きてこの方持病なし みちおしえまだ定まらぬ我が行方 なんとまあ大きな口や燕の子 折り合いのまだ付かぬまま梅雨に入る 耳鳴りの途絶えぬ日なり半夏生 半夏生己が毒気を払わねば 憲法のことはさておき昼寝さむ 風鈴の一つ動けば皆動く 安曇野の地蔵に添いて捩り花 繰り言も愚痴も途絶えて百日紅 その昔手紙燃やせし晩夏かな 一山の深きを鳴けり油蝉 七夕や人生まれ来て人を恋ふ 踊りの輪縮んで伸びてまた縮む まだ少し余韻を残し祭果つ |
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2013 娘二人音沙汰鈍き端午かな 襟足の白の眩しき更衣 母の日となるといつでも畏まる 出し抜けに苦手の人に逢ひ薄暑 古茶新茶些事に拘る性抜けず 2012 二粒が佳し安曇野のサクランボ 蛍舞ふ二匹三匹まで数ふ 鏡みて父に似て来し暑さかな 行く先は故郷なりや蝸牛 神宿しいるかも知れぬ蝸牛 終電の人影薄き晩夏かな 耳掻いてなおまだ痒き晩夏かな 忘れ物確かめている晩夏かな みんみんや何時もの言葉出て来ない 懐の乾きさながら晩夏かな 爽やかや墓など要らぬと言い放つ 坊さんも列に加わる踊りかな 釣り人の釣れたるを見ぬ秋の暮 古酒交し絆益々深まりぬ 塩少し振って枝豆茹で上がる 口数の少なき人と古酒交す 2011年 御神籤は紺色と出て濃紫陽花 青竹や我より先に逝きし人 アジサイや母奔放を全うす 行く先は紫陽花の咲くあのあたり 伊豆下田五月雨れているばかりなり 二つぶが佳し安曇野のサクランボ 蛍舞ふ二匹三匹まで数ふ 鏡みて父に似て来し暑さかな 行く先は故郷なりや蝸牛 神宿しいるかも知れぬ蝸牛 葱坊主おのれの丈を知りにけり 鎌倉の牡丹とりわけ静かなり 江ノ電の駅も路線も若葉かな ゆったりと言の葉つなぎ若楓 駆けてきて駆けて行きけり五月の子 2010年 衣替え少女女になりにけり 買って出るお膳奉行や暑気払い 大女将膝を正して夏座敷 大女将膝を崩して夏座敷 紫陽花や手鞠の中に秘めしこと 向日葵や少年突如宙返り 待ち人のまだ現われぬ薄暑かな 真ん中に子を吊り初夏の若夫婦 スルリスルリ変わる話題や若葉風 2009年 手土産の色紐解けば梅雨明ける 懐かしき人に逢ひけり星祭 梅雨明や海に戻りし海の色 床の間に良寛を下げ半夏生 紫陽花の奥よりショパン流れ来し 遠吠えの頻りに続く昭和の日 囀りと瀬音の遠く近くかな 鈍行が止まれば若葉風そよぐ 近付けば近寄ってくる目高かな 夕焼やゆびきりげんまンしてバィバィ 2008年 モジリアニ観て朧夜に紛れけり 暮れなずむ虚空に垂るる鯉のぼり 電話魔の電話来る頃日の永し 遠景は爺と婆組む茶摘かな たなごころ眺めていたる遅日かな 紫陽花や別れる為に人恋す 二度までも目覚めうつろや明け易し 母と梅叩き落しし日を想う 黒南風は大海原を集めけり 半夏生お膳奉行を買って出る むらさきの短冊もあり七夕竹 老鶯や閉ざれしままの長屋門 鎌倉の水色深し梅雨深し 空蝉をつまんで募る慈悲心 2007年 歯医者出て念力ゆるむ炎暑かな 老鶯や安土小谷に城は無し 梅雨明や野良猫仔猫連れで来る 炎天を蟲好かぬ奴やって来る 水打てばつと紅顔の郵便夫 茶の畝の一徹までの静かかな 廃嫡をして幾歳や蝦蟇蛙 逝く春ややや右向いて眠る癖 新樹新樹どこもかしこも新樹新樹 開宴の挨拶長き薄暑かな たっぷりと墨濃くしたる夏書かな 2006年 楚々と来てクルクル回る日傘かな 甚平を着れば男に戻りけり このあたり古墳の跡や梅雨深々 端居してもの見えぬもの見ていたり 水打って向う三軒両隣 十薬やこのごろ嵩む負けの数 蚕豆を食めば漂う母の味 太宰忌や晩年過ごす家捜す 病状は如何と問ひて夏帽子 一族の途絶えしあたり蛍舞う 一窓は富士一窓は柿若葉 竹売りの次は砥ぎ屋や傘雨の忌 諍いのほつれぬままに更衣 あちこちへハミングこぼし青き踏む 2005年 思い切り薄墨にして半夏生 貧相も人相のうち半夏生 鷲掴みしてみたくなり雲の峰 梅雨深し寡黙の男なお寡黙 咲き際も散り際もよき牡丹かな 叔母が来て叔父の事など若葉風 紅花の咲く頃人と別れけり 奥陸奥の風に従う植田かな 奥陸奥の懐深き青田かな 圧巻は焼筍や旅果てる 奥陸奥の青葉殊更青きかな 人呼んでいたるが如き河鹿かな 飲み疲れ語り疲れて河鹿かな 陸奥新緑ますます判官びいきなり 我が家には跡取り居るぞ鯉幟 薫風やコトコトコトと万歩計 惜春や電話にコイン落ちる音 橋渡るとき遠足の列縮む 行く春や源氏絵巻は玻璃の中 我が影の薄さを踏んで春惜しむ 2004年 夏料理京には京の流儀あり 夕焼けも小焼けもありし縁かな いっときは天下取りたり三尺寝 香水の漂う人を振り返る 風鈴の一つが鳴れば全部鳴る 垣根よりぬっと入りたる裸かな 空言の底は些細や水中花 ところてん薮から棒に本題ぞ 夏座敷はなし途切れて風動く 眦を裂いて西日に向かいけり 葛餅の黄粉にややの塩加減 諍いも中途半端や心太 尺蠖は八方睨み一歩出る 心病む人と座したる暑さかな 妻語り夫頷く桜桃忌 夏簾上げて碁敵侵入す 正直に馬鹿が付きけり蝸牛 巣立ちした後は雨風吹くばかり その後の便りは途絶え梅雨に入る 入梅の後も先にも飯を食う 足摺も室戸も霞む遍路かな 尺獲や平均年齢伸び止まず 衣更えて行き先告げず旅に出る 鎌倉の尼僧小走る薄暑かな 浅草の路地にて迷う傘雨の忌 見上げたる孫の背丈や柏餅 読みさしの本積み上がる薄暑かな ほろ甘きあとほろ苦き新茶かな 読みさしの本溜まりたる薄暑かな 日一日鳥の巣を観るつつがかな 老舗閉じ行き交う人は衣更 母の日の母の軽さを偲びけり 燃え出ずる青葉若葉や古戦場 真実は一つなりけり桐の花 2003年 老鶯や文字の掠れし道しるべ 梅雨晴れの海に海色戻りけり 世事疎き身にも世事あり昼寝覚む 水打って成さねばならぬ事も無し 居住まいの父に似てくる端居かな 罌粟坊主むかし毒舌なりしかな ひゃっくりの止まらぬままに梅雨に入る 尺獲や年金暮らし恙無し すっと出ぬ挨拶言葉蟻の列 衣更えて他人の顔になりにけり 鞦韆の空に近づくとき跳ねる 母の日やカーネーションを抱く茶髪 てにをはの一つ拘る立夏かな 2002年以前 父の日の事には触れず電話来る 十薬やしかと身に付く怠け癖 へぼ将棋一進一退明け易し 葉桜や今日二つ目の忘れ物 熱帯魚ひらりと見せる腹の底 植木屋が天に物言う立夏かな 釣銭の一つをこぼす炎暑かな キャンプ場の匂いいっぱい持ち帰る 炎天や髭ぼうぼうの男くる 蟻の列昔百姓一葵あり 母の味する空豆の届きけり のめりこむことも無くなり桜桃忌 大西日赤信号の続きおり 青柿や丹波笹山丹波焼 青梅雨や銭出して買う猫の餌 水打ちし格好のまま遠会釈 打ち水や男盛りをやや過ぎて 竹落ち葉かさりと人の匂いする 竹落葉耳掻棒の見つからず 竹落葉悲しきことは母の老い 田草取る男とりわけ静かなり 懐かしき顔の会いけり葱坊主 母の日や一日植木の手入れする エンパイヤーステイトビル霧霧霧 ニューヨークの夕焼さびし過ぎるかな 葉桜やつくづく白きなまこ壁 尺獲りや諍いもなし財もなし 穀象を真中に置きて世界地図 十薬や器を知りて恙なし |
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