冬の句 | |
2016 神木に額摺り寄せて初詣 冬蝶の辺り益々静まれり 祇王寺の丸窓あたり冬紅葉 母の忌の母を想える寒さかな 初時雨程よく道を濡らしけり 旅人の佇む辺り木守柿 乳飲み子のほっぺ真っ赤や春隣 意のままにならぬ足腰春浅し 新聞を斜め読みして春近し 生命線小指で辿り寒明ける 2015 新米を朝餉にしたる至福かな 朝市の声よく通り鰯雲 路地曲がり路地曲がり来て秋の海 愚痴一つ聞いて貰うや秋の風 秋刀魚焼く匂い漂い幸せだなあ 決めること多くなりたり懐手 此処だけの話長引く日向ぼこ 旅人が仰ぎ見ている木守柿 乳飲み子のほっぺ真っ赤や春隣 仮名多き牧水の軸春浅し 2014 寒卵誰にでも来る明日かな 立春や父に似てきし喉仏 針供養何時も姉には苛められ 義仲忌や加賀野に多き石仏 春雨や橋は四条か三条か 八の字に茅の輪潜りて恙無し 神木に触れ良きことや初詣 初旅は冥土土産となりぬらむ 石仏の片目毀れて冴え渡る 火の国の骨まで熱き初湯かな 来信に耳そば立てる小春かな 道一本貫いている枯野かな マスクして世間話に耳澄ます 初月の門まで送り握手して 霜月や龍太の事をふと想う 2013 寒卵時計止まりてまた動く 耳たぼの霜焼け痒き日和かな 春寒や路上芸人つととちる 立春や常より浅きたなごころ どう見ても喧嘩腰なり猫の恋 想い出を蔵出ししたり去年今年 初鶏を幽か遥かに聞き及ぶ 初烏一声ありであとしじま 時刻む速さに惑う七日かな 書初めは常より太き筆で書く 寄せ鍋を囲み碁敵恋敵 カレンダーっくり捲り十二月 師走路を博徒のごとく人分ける 艶少し残していたり枯芙蓉 クリスマス巷々の音の色 2012 不器用な母でありけり針供養 寒木瓜の目立たぬ様に目立ちけり 梅見して竹馬の友とはぐれけり ゴミ捨ての行きも帰りも春隣 歳時記の表紙の染みや春遅し 孫の背の高さに菊の枯れしかな 腹割って語る友逝く寒卵 煮凝や我が家に男筋絶えて 三日はや老眼鏡のありどころ 一月の月一月の顔をして 2011年 短日や京に西山東山 初時雨学生の押す人力車 屁理屈をまた披露して花八手 華子かも知れぬ真っ赤な毛糸玉 山眠り九十四の夢枕 寒卵だれにでも有る明日なり 寒月が鎌の如しとメール来る 日向ぼこ昔の顔に戻りけり ツンツンと来るや寄り添い寒雀 寒雷や橋の向こうにまた橋が 団欒を解きたる後の淑気かな 元旦や東に一歩二歩三歩 憎らしきこともありけり蕪汁 独り言言うこと増えて去年今年 爪の艶光らせて剥く蜜柑かな 2010年 横文字の車内広告暮れ易し いとおしやおちばにのこるうすみどり 冬ざれや犬の居ぬ犬小屋の穴 雲千切れ千切れに裂けて冬の雷 老いらくの恋や消え入る虎落笛 今年去年太宰治を読み直す 三日はや人恋しくて爪を切る 息溜めて一気呵成や筆初め 鈍行が箱根駅伝追越した 二日はや富士の裾野に煙立つ 2009年 どの人も人追い越してゆく師走かな 名月の丸ければ犬遠吠えす 恋すてふ奏でる如く落葉踏む 一枚の落葉の如く眠りたし 饒舌な人の隣や日短か 夭折の文士あまたやダリヤ開く 寒月を上り下りに別れけり 火口まで枯野の続くばかりなり あと幾度正月来るや豆を喰う ややもして遠くて近き時雨かな 風と来て風と消えたり除夜の鐘 正月の輪をくぐり抜けつつがなし 弓抱いて乙女ら冬の橋渡る 2008年 箸の位置元に戻して三日かな 侘助の二輪向き合う日和かな 男坂肩で登れば寒椿 我が影の伸び切る辺り寒雀 安曇野の蕎麦が旨しと初便り 落葉踏み益々募る無口かな 野放図に生き永らえて帰り花 人声の途切れ途切れて冬野かな 熱燗や大法螺吹きの大鼾 朴落葉しみじみ肩の力抜く 2007年 向い家のむすめ亀飼う師走かな 水涸れて男一升下げて来る 冬立ちて水美しくなりにけり 懐手今日の日暮れのはやきこと 悪しき過去吾にもありて虎落笛 深爪のチクチク痛む神の留守 前世は風かも知れぬ枯尾花 此処だけの話長引く冬日和 蟇塚の笹の葉擦れや冬立ちぬ 石蕗咲いて木漏れ日和になりにけり 龍の玉探し当てたる好き日かな まず飲み会を記しにけり初暦 期外収縮言語障害隙間風 墨の香の漂う賀状届きけり 車椅子の友を訪ねる二日かな 2006年 着膨れてポンと腹打つしじまかな 熱燗を空けて大股男坂 中年の頃が懐かし冬紅葉 狐火や昨日あやつの噂聞く 熱々のおでんでんでん長生きしょ 初時雨村も港も沈みけり 湯豆腐や未だ明かさぬ嘘一つ 良寛の偽物らしや神無月 幾度も頭かしげる蜻蛉かな 義理一つ二つを欠いて残る虫 仲見世の大提灯や初燈 東雲の割れめを割し初日かな 去年今年流れるままに流れけり 鴉二羽寒夕焼けを戻りけり 黒富士の襞滾りたる淑気かな 2005年 鳰くるり尻出してから潜りけり 駅員は駅長だけじゃ木守柿 名匠の絵皿の如し柿落葉 飛石を千鳥に残す落葉かな 肝心なことは濁らし鮟鱇鍋 芦ノ湖に海賊船や神無月 立冬の血圧計の上下かな 我が恋の如きに釣瓶落としかな 渋柿や道しるべたつ村境 富有柿や昔榮えし宿場町 逆光を背に背に木の芽木の芽かな 初午や紅き物より箸つつく 優しきは梅の蕾の固さなり 厨よりトトントントン春立てり 息ついて吹いて窓拭く二月かな 初空やまず確かめる富士の山 元日や子に譲るもの何もなし 書初は墨たっぷりとまず点だ 外孫と背比べしたる三日かな 侘助の咲くともなしに咲きにけり 2004年 何事も腹に収めて山眠る 山茶花や今日一日もつつがなし 丸顔の町内会長冬温し 河豚鍋を突く不倫をせし如く 短日やまた三叉路に行き当る 行き行きて三叉路にでし寒さかな 寒茜こくこく富士の色変わる 大根を抜く度上がる大歓声 葱一把だけぶら下げて家路かな 短日やコトコトコトと夕陽落つ 能面の如き顔来る寒さかな 思い出し笑いの後のくさめかな 笹鳴きや苔に隠れし句碑の文字 笹鳴きのあたり残して暮れにけり 万両のたわわなりけり猫昇天 冬座敷猫死に場所を探しおり 買物をあれこれ済ませ日を数ふ 坊ちゃんと呼ばれてみたや漱石忌 病名は期外収縮日短か 2003年 故郷に母残し居る寒さかな 二重丸一つ残して古暦 出でて来ぬその一言や懐手 横顔を見らるる気配懐手 着膨れて眼鏡を探すおかしさよ 指折りて余命を数う寒さかな 母の癖思い出したる葛湯かな 異郷にて日本酒の無き寒さかな 若かりし母そこに居る葛湯かな 手招きを避けて去りけり冬の蝶 2002年以前 まだ胸に熱きものあり冬木の芽 隙間風水に流せぬ事もあり 幸せの余る刻あり日向ぼこ 廃嫡の我に墓無し冬の蜂 湯豆腐の向こうに過ぎし齢かな 天狼やますます蒼きモジリアニ 大根を斜めに切りて人思う 寒稽古する板の間に節目あり 帰り花中国残留孤児の母 隙間風無口な男となり果つる 風余るとき枯れ草さみしかりけり 初景色手の中に富士入れてみる 大落輝みて水仙の匂いかな 屠酒飲めば天下国家に言い及ぶ 子を打てぬ父になりたり冬木立 湯豆腐のあと石庭の人となる 二ン月や千鳥格子の柄流行る 年玉に父の威厳を込めにけり 落ち葉踏む音一つ減り二つ減り 寒烏や一声裂きて動かざる 寒菊や余白の多き便り受く 初冬や福井今庄おろし蕎麦 爪少し深く切りすぎ冬に入る 屋根職の声千切れ飛ぶ時雨かな 縁薄き娘の集め来し木の実かな 寄せ鍋をいろんな顔とつつきけり 小鳥来る既に番となりて来る 天狼の下にて靴の紐結ぶ 山茶花の白沈黙の午後三時 木枯や青竹売りの声途切れ あの顔のあの癖字なり年賀状 去年今年汽車に乗る人降りる人 事ありし事には触れぬ賀状かな 海原や赤道直下より賀状 初笑いして初泣きに変わりけり 妻近く遠くにありて七日かな 薄氷や捕らえて逃がす言葉尻 倒れてもなお水仙の白さかな 三日はや姿あらわす癪の種 臍繰りの乏しくなりて寒卵 寒水やごくり膨らむ咽喉仏 |
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